スペイン ヨーロッパ旅行

【妄想Trip】夢から醒めてもバルセロナ① 【スペイン一人旅】

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※この記事は妄想Tripです。実際の旅行ではありません

 ※いくつかの写真はshutterstockかフリー素材サイトからお借りしたイメージ画像です。実際とは異なる場合があります


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失恋後に1人で旅するには、スペインはまったく向いてないとおもった。

昨日の夕方、スーツケースをひっつかんで、飛びだすかのように家を出て

羽田空港から飛行機に乗った。

いろんな人が行き交う空港に行けば

シートに座るだけでわくわくする飛行機に乗れば、

そして

まだ見たことのない異国の地に足を踏み入れれば、

この憂鬱は一瞬にして消え去るはず。

そう信じて、 いや

祈るようにしながら

私は人生でちょうど10か所目となる外国へと降りたった。

4月のあたたかな陽射しに、色鮮やかに咲く花。

まるで私たちは幸せですと高らかに叫んでいるかのよう。

空港の中だというのに、大げさだな。

目をそらすように反対側を向くと、

小さな赤ちゃんづれの夫婦が、ベビーカーを押しながら仲よさそうに散歩をしている。

誰かのお迎えなのかな。

シャツにジーンズというシンプルな洋服も、海外の人の華やかな顔だちにはとてもよく似合って、

おしゃれに感じる。

すっぴんみたいなのに、あんな簡単な格好がさまになるなんて、いいなあスペインの女性は。

なんて、見当違いの軽い嫉妬がぷかっと浮かんでは

まあどうでもいいか、と消えていく。

今までの私だったら

赤ちゃんづれのパパとママを見かけたら、それこそこちらまで明るい気分になって

「わー!かわいいねー!」と心から思いながら駆けよっていたはず。

そんな感情は、隣に誰もいなければ生まれてきさえしないのだということに

1人になって初めて気づく。

ハッピーがはじけるような暑苦しいまでの空気を目の当たりにして、

私は所在なく、

なんで来てしまったんだろう・・と灰色の気持ちにしずんでいた。

せめて、ひとり旅じゃなくて

気のおけない友人と来ていたら?

でも、そんな友達なんて私にいるんだろうか。

この1年間、暇さえあれば嶺といっしょにいて、

会社の飲み会は「仕事で顔を合わせてるのにプライベートまで話すことない」

女子会は「女だけで群れるなんてモテない女のすること」

同窓会は「思い出をつまみに飲むビールなんて生ぬるくてまずい」

なんて、もう振り返れば

頭が痛くなるような高飛車な理由で、ことごとく断った。

だって、私たちが出会ったのは

飲み会とか合コンとか、いわば俗っぽいと当時の私が考えていたものではなかったから。


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「ねえ、嶺ってなんて読むの?」

席に置いてあるパンフレットをながめても、ふりがななんて書いてなかった。

きっとこんな前の方のチケットを買う人は大ファンの人たちに違いないから、

周りの人たちに聞かれたら恥ずかしくて、声をひそめて麻里弥の耳元でささやいたのに

「えー!!さすがに読めるでしょ!!りょうだよ、りょう!!」と

いつもどおり空気を読まない笑顔と大声で、

明るく麻里弥は答えた。

「え、まさかミネだと思ったの?」と勝手に解釈すると、彼女はまたまた大声でケラケラと笑いだした。

麻里弥からは「大学の先輩の演奏会があるから、一緒に行こう」としか言われていなかった。

社会人サークルかなにかの発表会かと思って気軽な気持ちで参加したのに

S席・A席と分かれているような大型のコンサートホールで、

目の前に鎮座する漆黒のピアノは

今まで見たどのグランドピアノよりも輝いて、高貴なものに思えた。

「嶺北のレイかと思ったんです」

演奏会の最中、私は自分がどこにいたのか覚えていないような

ふわふわとした夢見ごこちな状態で

次にはっきり記憶があるのは、終演後、麻里弥が楽屋に連れて行ってくれた時。

思ったよりも華奢な人なんだな。

というのが最初の感想で、

さっきまで舞台のあっち側で、自分の手の届かないところで滑らかにピアノを弾いていた人が

勇気を出そうものなら触れられる距離のところで存在しているところに、驚いた。

「嶺北?ああ、山の?そんなの初めて言われた。だいたいいつもミネって呼ばれて、からかわれて。」

細い手足のわりにはゆたかな唇をほんのりゆるめながら、

その人は私の目を覗き込んだ。

私の目は、そのまま彼の目から離すことができなかった。

隠しておきたいほど愛おしい想い出というのは、人に話すこともなく

どこかに文章としてしたためておくこともないのだけれど。

いざ記憶の断片を拾い上げてみると、こんなにもするすると流れるように

思い出してしまうものなのだな。

そんなことも、私は27歳にして初めて知った。

飛行機の中では、一眠りして、目を覚ましさえすれば

すべて嘘になるんじゃないかと思っていた。

嘘。

夢なんて甘い響きのものじゃなくていいから、

「ドッキリでしたー!」なんて似合わない看板を持って登場してくれていいから。

それでも、流し込むように飲んだワインに酔って

ことのほかぐっすり眠ってしまい

機内食のアナウンスで目を覚ました今朝になっても

バルセロナの空港に足を下ろして、遠い日本から離れて

異国の地を踏んでも

何も、なにも変わることのない現実しかここにはなかった。

自分が今、漫画や小説の世界の主人公だったら

これが創られたストーリーだったら

夢から醒めたら、

こんな陽気すぎる、来たくもなんともなかった国じゃなくて

いつもと同じ場所に戻れるんだろうか。

東京に

いや、国や地域はどこだっていい。

細くてやわらかい髪の毛と、とがったあご。

指輪は決してつけない主義の骨ばった、細い指。

でも、手を繋げば、意外にもその指がしっかりとかたくて、守られているような気持ちになった。

私より痩せているくせに、美味しいものが大好きで、いつもずるいなーと彼のお腹を突っついていた。

酔うと明日の練習に響くからって、お酒は絶対飲まなかったけど。

程よくピンクで、上唇だけぷっくりと膨らんでいるくちびるから紡がれる言葉は

いつも耳障りがよくて、

私をどこにだって行かせてくれた。

その人の、隣に。

夢から醒めたら、戻れるだろうか。

ハリウッド映画や、ドラマの主人公じゃない。

そんなこと、とっくに分かってる。

奇跡なんて願うほど起きないし、

無宗教の私には祈る相手だっていない。

でも、ここは少なくともバルセロナだ。

日本にはいられなくて、その日中に出発できるチケットを調べて、

たどり着いた場所。

少しくらい、夢をみたい。

夢から醒めたら、どこにいるか分からないけど。

そんなことを考えながら、私はバルセロナの空港の前に停まっているタクシーに乗り込んだ。


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〜次へつづく〜

まるこ

その他の妄想Trip

クアラルンプール(ストーリー仕立てではありません)

シンガポール(女2人旅、珍道中♪)

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舞台と役者のあれこれコラム

https://note.mu/mousoutrip/m/m502772eea6b6

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