いつも赤い服を着たおじさんが雑誌を持って立っている。
何も知らなかった頃は、
なにかの勧誘かな?と思って、目を合わせないようにしていました。
というブロガーさんを知り、
同い年ということもあり
最近はツイッターもブログも毎日欠かさずチェックしているのですが、
そのイケダさんが、「ビッグイシュー」という雑誌について呟くようになりました。
ホームレスの人が「ビッグイシュー」を売ると、
その売り上げの何割かがホームレスの人に入るという素敵な試みらしく、
小さい頃地元で有名だった「黒いおじちゃん」というホームレスの方を思い出した。
彼は会うたびに、子どもの私にも「お金ちょうだい」って言うんだけど、
不思議と怖くはなくて、大人たちもたまに彼にお金をあげてるみたいでした。
黒いおじちゃんも、ビッグイシューの販売員になってるかな、なんて思った。
でも、こんなふうにビッグイシューの存在を知ってからも、
駅前で雑誌を売り続けるおじちゃんたちこそがビッグイシューの販売員だということに、しばらく気づかなかった。
私がビッグイシューを買うきっかけとなったのは、販売員のおじちゃんが変わったことです。
今までのおじちゃんは、ただ黙って雑誌を持ってたんだけど、
ある日新しいおじちゃんになって、毎日何かを言ってることに気づいた。
たまたま近くを通った日、
おじちゃんは雑誌の記事の説明を一生懸命しゃべってた。
だれが立ち止まって聞くわけでもないんだけれど、
おじちゃんがとにかく一生懸命に、だれかに届くように話してることがわかって、
思わず「一冊ください」と言っていた。
おじちゃんは一瞬ちょっとびっくりしていたけど、
すぐに照れたような笑顔で「ありがとうございます、ありがとうございます。」と雑誌を大切そうに渡してくれた。
私が去るとき、おじちゃんは帽子をとって深々とお辞儀をして、大きな声で
「ありがとうございます!」と言ってくれた。
おじちゃんの声は割と大きくてよく響いたので、私はちょっと恥ずかしかったんだけど、でもなんだか嬉しかった。
だって、ものを買ってこんなにまっすぐ「ありがとう」と言われたのは、いつぶりでしょうか。
コンビニに行くたび、スーパーのレジに並ぶたび、かなしくなる。
大声で「いらっしゃいませー!」
一言一句丁寧に「ありがとうございましたー、またお越しくださいませー」
って店員さんはみんな言ってくれるけど、その人たちの目は私を見ていない。
「いらっしゃいませ」の挨拶も、
「ありがとうございます」のお礼も、全然私には向けられてない。
そして、ものを買うお客さんたちも、無言で商品をカウンターにおき、タバコがほしければ無言で指差す。
人と人が出逢っているのに、
そこには何も生まれてない。
こんなの、機械が相手だって同じだと思う。
だから、ものを買って、気持ちがあたたかくなる。
そんな体験、久しくしたことなかった。
ビッグイシューのおじちゃんは最近また変わって、
今のおじちゃんは雑誌の内容をしゃべってくれない。
でも、ただひたすらに「こんにちはービッグイシューです!」と叫んで、一生懸命商売をしている。
雑誌を買うと、私の目を見て「ありがとうございます」と言ってくれる。
私はその姿をみると、なんだか姿勢が伸びる。
そういえばビッグイシューのおじちゃん達の他にも、私をハッピーにしてくれる販売員さんがいます。
それは会社の前でお弁当を売ってるおばちゃん。
なぜかいつも嬉しそうにお弁当を紹介してくれます。
「今日は回鍋肉と、ハンバーグと、あとオムライスがあるのー!」
ただお弁当を一個ずつ見せてくれるんじゃなくて、可愛い息子達を私に紹介してくれてるみたい。
なんの変哲もないお弁当なんだけど、選ぶ私もわくわくしてくる。
散々迷って、「じゃあオムライス」って選ぶと
「あらー!嬉しい!!」ってなぜか喜んでくれて、私もよくわからないけどなんか嬉しくなる。
おばちゃんのおかげで、
ただのお弁当が
運動会でお母さんが作ってくれたお弁当みたいに、
楽しみでわくわくしてあったかなお弁当になる。
この間なんか、「はいおまけ!」ってヤクルトをくれた。
「ヤクルト飲むなんて久しぶりです」って思わず言ったら、
また
「あらそう〜?嬉しいわー!」って喜んでくれた。
なにが嬉しいのかは正直いつもわからないんだけど、
おばちゃんが口だけじゃなくてほんとに喜んでくれてるのが伝わってきて、私も楽しくなる。
このお弁当たべて、おまけのヤクルト飲んで、午後もがんばろ!って、
力がチャージされる。
お金を出して商品を買ったことに違いはないのだけど、決してただの「消費」ではないと思う。
お弁当が、食べものとしての役割を超えて、私の気持ちをあったかくして、パワーまでくれる。
これはお弁当の力だけじゃなくて、お弁当を売ってくれたおばちゃんの力だ。
商品の価値に、お客さんが嬉しくなる何かをプラスしてくれる。
それがサービスであり、ものを売るってことなんじゃないかなって、思います。
最近は、仕事でお客さんにイライラしちゃったり、やってられない!って思った時、
いつもビッグイシューのおじちゃんの「こんにちはービッグイシューですー」って声がよみがえります。
毎日駅前に立ってくれて、お手本をみせてくれるおじちゃん達。
雑誌の内容もいつもすごく面白いから、毎回買っちゃう。
これは今月号の、揚げ浜式製塩の話。
ぜんぶ美味しそうで、塩にこだわってみたくなった。
あのおじさん達なんなんだろう、とか怖いな、ともし思ってる人がいたら、ぜひ一度おじちゃんからビッグイシューを買ってみて下さい。
ものを買う醍醐味ってこれなんだ、商売ってこういうことなんだ。
って、私みたいに気づかされるかも。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
まるこ
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